夏のよく晴れた日、チリチリと綺麗な音色を風鈴が奏でていた。


「三蔵、後で姉さんが遊びに来るって〜♪」

八戒達と一緒に、と付け加えると思いっ切り眉間にシワを寄せて毒吐いた。

「ここで溜まるんじゃねぇよ。」

「仕方ないじゃん。三蔵忙しいし…私だけ出掛けると怒るクセに。」

思いっ切り口を尖らせては反論した。
実年齢の割には子供っぽい反抗に三蔵の呆れた表情が向けられる。

「何よ。」

「…はぁ。」

ため息プラス1。完璧に馬鹿にされてる。
ムッとして口を開いた時、元気良くドアが開かれた。


「よ、生臭さ坊主!相っ変わらず書類ばっか見てんのか〜?」

悟浄、、八戒と悟空が部屋になだれ込んできた。
しかも全員、浴衣姿だ。

「あ〜!姉さん浴衣だ!」

うす桃色に赤い芍薬模様の浴衣を着たに、ありがとう。と微笑まれてが頬を赤くする。

「着付け頑張ったんですよ。」

隣に立つ八戒も浴衣で、三人の着付けを八戒がしたらしかった。
軽くセクハラ?って疑問は置いといて。

「三蔵!夏祭り行こうぜ!」

書類の積まれた机に身体を乗り出すように三蔵を見て悟空がねだる。

「何が楽しくてお前らと祭りなんか…。」
「そういう可愛く無いこと言ってると嫌われちゃうわよ。三蔵サマ?」

「そ〜だよ三蔵、せっかくなんだし行こうよ♪」

顎に指を当てて微笑むは艶やかだった。

「私も浴衣着てくる!」

パタパタと駆け足で自室に向かって走る。

「どんな浴衣着てくるんですかね、は。」

「腹の色(黒)と同じとか?」

ははは。と悟浄が笑うと八戒の容赦ない一言が向けられた。

「派手な紅よりマシじゃないですか?」

   悟浄の負け。


「カッコ付けちゃって〜(ニヤリ)」

「何だと?」

の挑発にまんまと乗った三蔵は片眉を上げて睨む。

「ホントはお祭り行きたいんでしょ?素直になりなさい。若いんだから。」

損するのは自分なのよ!と言うに八戒、悟空、悟浄が突っ込む。

『『言うほど歳変わらないじゃん!』』

「手前ぇに関係ねぇだろうが。」

「あるわよ、をガッカリさせるつもり?」

ぐっと三蔵が一瞬押されるも、すぐに不遜な態度にもどる。

「わざわざに言われる筋あいは無ぇ。」

「ある!大事な妹分なんだから。」

こんなの 止めとけって言ったのに…と挑発を超えて若干本音が零れる。
その瞬間にに向かってハリセンが振り下ろされた。
スパーン!
乾いた音が響くと同時にが戻ってきた。

「「「あ。」」」

三人の声と共にが近づき、三蔵の横から太ももに蹴り一発。

「!?何しやが…「女性に手ぇ上げてんじゃないわよ。姉さんしばくて、どうゆぅ事?」

「だからって蹴んじゃねぇ!バカ娘!」

ぎゃあぎゃあと怒鳴り合いが始まり、達は呆れ顔で見ていた。

「、危ないからこっちへ。」

二人との間に立つように八戒が半ば抱くような形でたまおを庇う。

「最近 公務ばっかりじゃん!偶には一緒に出掛けたいのがダメなの?」

「最初っからそう言えってんだよ!バカ!」

「バカ馬鹿言わないでよ!」

一向に終わる気配を見せない喧嘩に八戒が怒る。

「いい加減にしてもらえますか、三蔵?が祭りに行く時間が減るんですけど。」

せっかく浴衣を着せて、着飾ってるのに勿体無いと愚痴る。

「ふん…。」

も浴衣の乱れを直して綺麗に整えた。
ちょいちょいと帯びを直して、の袂を軽く摘む。
三蔵は面白くなさそうに様子を見ていた。




「わ〜♪」

柔らかい提灯の灯りが揺れ、人々の楽しそうな顔で溢れている。
金魚すくい、綿アメ、射的、リンゴ飴…店の前に所狭しと並んだ店に心が弾む。

「「まずは、リンゴ飴!」」

がウキウキした様子で悟空とハモると斜め上から小さな声が。

「太るぞ。」

じろりと睨みつけ三蔵の言葉を黙殺する。
悟空と手を繋いであれやこれやと買い回った。

「ぼうず、可愛い彼女連れてるじゃねぇか!おまけしてやろう♪」

たこ焼きの屋台で2パック頼むと、気の良さそうなおじさんが二個おまけしてくれた。
ちょっと照れ臭そうにはにかむ悟空。
スパーンッと容赦なくハリセンが振り下ろされた。

「いって〜!何すんだよ暴力たれ目!」

「ふん。」

その様子を見てが笑った。

「ふふふ、三蔵ったら独占欲強いわねぇ♪」

その瞬間に三蔵が固まり、かすかだが頬を赤らめた。
日中であればより鮮明にその変化を見られた事だろう。

「…独占欲ってヤキモチ?」

答える代わりに三蔵が目を逸らしたのが何よりの証拠。
そしての顔には満面の笑みが。

「ほんっと可愛いんだから〜、三蔵ってば♪」

「殺すぞ。」

目を合わせないまま、いつものセリフを口にする。


ヒューー パー…ン パラパラパラ…

赤い大きな花火が夜空を彩った。

「あ、始まった。」

の声に重なるように色とりどりの花火が打ち上げられる。
みんなが花火に魅入ってる間、三蔵はの横顔を見ていた。
八戒もまた、を見て肩を抱き寄せる。
その肩に頭を預けるように凭れて互いの存在を噛み締めた。





寺院に戻り、達と別れた後、悟空は疲れたのか自室に戻り、三蔵とは三蔵の自室で月を眺めていた。

「夏…終わっちゃったね。」

少し気温の落ちた静かな夜。
吹く風は秋の気配に変わりつつある。
窓枠に二人で腰掛けてビールの缶を煽った。

「来年になれば嫌でも廻ってくる。」

「そうだね。また皆とお祭り行こうね。」
「…気が向いたらな。」


重ね合わせた唇は、夏の終わりみたいにほろ苦くて、愛おしかった。












==========================言い訳=====================================

はい。お付き合いいただいてありがとうございましたm(_ _)m
私の最愛の姉(的存在)の瑞音さまに捧げます。
久し振りの夢でございます。

ちゃんが浴衣を着るスピードが異常に早いが、気にしないでください。
時間軸おかしいな、と思いつつも話が進まない(笑)

お姉さんからリクエスト頂いて、かなり楽しんで書かせていただきました(*^^)v

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