*** 玩具 ***
バンッ
物凄い音を立てて扉を開けたキルアが、息を切らしながら叫んだ。
「姉〜!!」
「何よ、騒々しいわね。」
ソファに凭れて読書をしていた所を邪魔されて腹立たしげに答えた美人は、
イルミの二卵性の双子の姉、だった。
キルアを見ずに読書を続けている。
「何だよ、これ!」
ずいっと目の前に出された本をようやく顔を上げて見ると、「キルアとゴンのラブラブ日記」
と書かれていた。
「何って…『キルアとゴンの…』」
「俺が言いたいのは、そういうんじゃ無くて!」
「じゃ、何が言いたいの?」
楽しそうにクスっと鼻でわらった。
キルアがイライラするのを見て楽しむ癖は昔から変わっていない。
むしろ手口が巧妙になってきている。
「何でこんな物が存在して、何でこれをゴトーが持ってたんだよ!?」
「何で私に聞くのよ。」
「作ったの、姉貴だろ?」
必死に怒りを抑えつつ笑顔を保とうとしている。
手はぎゅっと拳が握られていた。
「だってゴトーがキルアが旅立ってから寂しそうだったんですもの。」
を知らない男なら一瞬で許してしまいそうな、可愛らしい笑顔では笑った。
だからってこんな同人誌紛いの物を作って良いことにはならないが…。
これ以上責めるのは出来ない気分にさせられる。
「う…だからって!」
「もとはと言えば、キルアが出てった事に原因があるんじゃなくて?」
「それ…は…。」
自分は責められる謂れは無いと開き直るに、キルアは何も言えなくなってきた。
「キルアも反抗期なのかしらね。昔は……。
ウル●ラマンに憧れて大きくなりたい、と言ったときに青汁と酢を混ぜた物を大量に飲めば
大きくなれると教えると実行して倒れ。
空を飛びたいと言った時には、風呂敷を持って屋根から飛び降りると飛べると教えれば、実行して
地面にめり込んで骨折し。
官能小説を「詩」と称して暗記させて、夕食の席で暗唱させて気まずい空気を作らせ…。
あんなに素直で可愛かったのに…。」
「あれの原因、姉だったのか…(怒)」
過去の大怪我や大恥は全ての原因がにある事が解って、キルアは怒りが頂点に達しかけた。
「あら、やだ。今頃思い出したの!?」
「姉!今度という今度は絶対に…!!」
「あら、お姉さまに逆らうの?最近は修行も頑張ってるみたいだし、これらの写真を
あげようかと思ったけど…。逆らうなら止めに……。」
スッと5冊ほどの薄いアルバムを扇状に広げて、キルアの目の前でちらつかせた。
「くっ……ごめん…なさい。」
「解れば良いのよ♪はい、どうぞ。私、出かけるから部屋から出てってね?」
さっさとキルアを追い出して自室へ向かわせ、は廊下を反対へ歩いていった。
「まだまだ、キルアで遊べそうね。良かった♪」
上機嫌で外へと向かう。
部屋に帰ってキルアが写真を確認すると…
「っンだよ、コレ!」
ページの一面にゴトーの写真が貼られているアルバムと、
体はキルアとゴンだが、顔だけはイルミとヒソカに変わった合成写真が貼られているアルバムと、
ミルキの入浴シーンや寝顔が貼られたアルバムのみだった。
ページの最後には「甘いわよ、キルアv by」と書かれた写真が一枚。