10月31日
欧米ではハロウィンと呼ばれる日。

「「悟浄〜、Trick or Treat?」」

「は?」

が両手を出して見上げてくる。
何を言ったのかわからず、当惑した。
しかも、この仮装は何なのだろうか。
が着ているのは緑のリボンが胸元で網上げになっている
黒のミニドレスで、頭に猫の耳をつけている。
一方、は赤いシフォンのドレスに、赤い尖った帽子を被っていた。
丁寧に悪魔の角までつけている。

「おや、お二人ともお似合いですね。」

通りかかった八戒に二人が狙いを定める。
少し腰をかがめて頭をクシャクシャと撫でられて、猫の様に目を細めた。

「ちゃんも、可愛らしいですよ。」

ひょいっと抱き上げられて、八戒より少し目線が高くなる。

「ずるい、お姉さまだけ〜!」

八戒、抱っこ〜と足元でが跳ねた。
それを悟浄が抱き上げる。

「ほら。より高ぇだろ?」

八戒よりも身長の高い悟浄の肩に抱きあげられて満足そうな笑みを浮かべる。
片手で悟浄にしがみ付きながら落ちないように、片手を延ばし、八戒に問う。

「八戒、Trick or Treat?」

「Oh,scares me!」

を抱いた反対側の手で、ポケットから飴玉を二粒取り出した。
さすがは八戒である。
異国の風習をよく知っている。
面白くない半分、飴玉を機嫌よく口に放り込んだ。

「悟浄、Trick or Treat?」

今度はが悟浄に尋ねる。

「あ?とりっく・・・??」

その瞬間にが顔を見合せて笑った。

「「Trickだね?」」

どこから出したのか分からないが、の手には三又が。

「えいっ!」

ボフンッ 「ぉわ!?」

が三つ又をひと振りすると共に悟浄から大量の煙が立ち上り、悟浄を包んだ。
気づくと赤いワンピースを着て、三つ編み姿に。

「なっ!!??」

ひょいっと悟浄の肩から飛び降りて、八戒の背後に隠れた。

「こら!!、頼むから戻してくれ!」

顔を真赤にして、必至に頼む悟浄にべーと舌を出して拒否のジェスチャー。
そこに運悪く悟空が。

「悟浄…?だっせー!!何その格好!!??」

ここぞとばかりに大笑いし、涙目になりながら笑う。
悟空に笑われた事に恥しさは増す。

「うるせぇ、この馬鹿サルが!!」

「ぶくく・・・その格好で怒っても恐く無いもんね〜♪」

ギャーギャーと乱闘に発展し、遠巻きにその様子を見ていた。
そろそろ止めようかと思っていた刹那。
光の玉みたいなのが5人の背後に現れた。

「よぉ。相変わらず騒がしいな、お前らは。」

「「あ。。。」」

言わずと知れた観世音菩薩。と次郎神。

「久し振りだなぁ。ん?金蝉が見当たらないようだが?」

何か企んでいるのだろうか?
オレンジのマントを羽織り、頭には魔女の帽子をかぶっている。
明らかに違和感。
次郎神は恥ずかしそうに頭にカボチャの飾りを乗せていた。
無理やり付けられたらしい。

「よし、ちょっと引っ張ってこい。そこの赤いの。」

「名前で呼べって!」

「んじゃ、オレ行ってくる。」

反論する悟浄に代わり、悟空が赴くこととなった。
嫌々ながら連れてこられた三蔵。
あからさまに不機嫌な顔をして不遜態度をとる。

「よぉ、金蝉。お前に面白い物持ってきてやったぜ。」

ぽいっと投げて寄越された袋。

「開けてみな。」

片眉をあげ、訝しみながら開けてみる。
袋から取り出されたのはバニーガールの衣装。

「・・・。」

問答無用で菩薩に向けての発砲。
まったく意味を成さないのだが。
くだらん、とばかりに投げ捨てられた衣装をが持ち、三つ叉をひと振り。

ボフンッ 

三蔵の体から煙が発せられ、晴れてから見えたのはバニーガールになった三蔵。
しかもモデル立ちをしていた。(一瞬だけど)

「っ!!??おい、!てめぇ、元に戻しやがれ!!!」

「あーっはははは!!!」「ひゃはははは!!」「ぶくくっふふふっ!!!」

周りからは盛大な爆笑が。
悟浄が笑い過ぎてバランスを崩し、そのままにぶつかった。
ブラックアウト。

「、おい!起きろ、この馬鹿娘!!おぃ、・・・〜〜!!!」










「、てめぇいい加減に起きやがれ!」

聞こえた声と共にハリセンが振り下ろされる。
スパンッ

「いた・・・。」

「そうは聞こえねぇな。」

「…くないもん。」

シーツにくるまり、まどろみながら三蔵の声に安堵する。
―まだ此の世界に居るのだ―と。
当たり前に毎朝聞こえるこの声に安心をおぼえる。
眠る前はいつ元の世界に還るか不安だが、起きた時に確認する癖が出来てしまった。

「なんか、すっごい変な夢みた。」

「寝ぼけてんのか?」

「ニ頭身くらいになって、三蔵を魔法でバニーガールに変える夢。」

「殺すぞ、てめぇ。」

銃を向けられても、発砲された事はない。
照れ隠しとわかってるから。
どうか、この先も三蔵たちと一緒に迎えられる朝がありますように。



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